ACCESS 〜君の声が聞きたい〜 1995年作品

少年●●●●用企画

ACCESS (16〜20P用)
 〜君の声が聞きたい〜

雑踏の中を寂しそうに歩いている少女がいた。

少女はふと一件の喫茶店に目をやる。
店の名前は「あくせす」。 それほど大きな店ではないのだが清潔そうな店であった。

店に入る少女。 いまどき自動ドアではない。

店長  「いらっしゃいませ。」
少女きょとんとして店を見渡している。

外には多くの人が歩いているのに店の中には一人の客もいなかったのであった。
口髭の生えた人の良さそうな店主が笑顔でカウンター席を勧めた。
恐る恐る席に着く少女。

店長  「何にします?」
少女  「え、えーと。」
店内のまわりに張ってある短冊タイプのメニューを見渡す少女。

少女  「じゃあ、あくせすブレンドでお願いします。」
店長  「…お嬢さん、何か悲しいことがあったみたいだね。」
少女  「え、何で…?」
店長  「悲しみを抱えた人は必ずあくせすブレンドを頼むんだよ。」
少女  「今日、彼とサヨナラしてきたんです。」

何も言わず、コーヒーを差し出す店長。
店長  「あったかいうちにどうぞ。」
少女  「…おいしい〜。」
店長  「それはよかった、どうだい元気がでたかい?」
少女  「ええ、でも…。」
店長  「…サヨナラは出会いの扉の鍵なんだよ。」
少女  「…え…?」

一枚のメモを渡す店長。

店長  「君がその扉を開ける勇気が生まれた時にそこに電話してみるといい。」
少女  「そ、そうするとどうなるんですか?」
店長  「さあ…?」
少女  「さあって、そんなぁ。」
店長  「時と場所、君の気持ちによって変わるからね。」
少女  「いったいこの電話の場所はどこなんですか?」
店長  「さあて、何かのおまじないだと思ってればいいんじゃないですか、ハハ…。」
少女  「…。」

自宅に戻った少女だが、いまだ悲しみが離れないでいる。
彼の写真を破り屑籠に入れる少女。

少女の泣いた赤い目に喫茶店で貰った小さなメモが映る。

少女  「…出会いの扉…。」
少女の手が電話に伸び、扉へ一歩近づきつつあった。

数日後、新宿の映画街の一角に立つ少女の姿があった。

少女  「確かこの辺だと思うけど…。」
その時、ビル風であろうか、突風が彼女の側を通り抜けた。
少女  「キャ…」
すると彼女の脛に500円札が張りついた。
少女  「あら、珍しい。 でもラッキー。」
少年  「あ、すいません。」
少女  「…?」
少年  「そこで財布を開けて買い物をしようとしていたら、その時に風が吹いて…。」
少女  「はあ…。」
少年  「あ、でも、やっぱり拾ってくれたからお礼しなくちゃね。」
少女  「あ、いえ、そんないいですよ。」
少年  「かと言って、100円では失礼ですし、どうですか、お茶の一杯でも飲みませんか?」
少女  「新しいナンパ?」
怪訝そうな顔の少女。
少年  「そんな、突風は嘘をつきませんよ。」
人の良さそうな少年の顔が少し困った感じになる。
少女少し微笑んで。
少女  「じゃあ、偶然を信じて一杯だけね。」
少年  「よかった、いいお店を知っているんですよ。」

少し歩くと小さいが窓が大きく開放的な明るい紅茶専門店の前に出る。

少年  「どうですか、ここなら女性の方でも安心して入れますし、コーヒーが苦手な方でも満足いく飲み物が飲めますよ。」
少女  「気がきくんだぁ。」

店の中に入って、メニューを見る少女。
ところが専門店だけあって、どのメニューも500円以上である。

少年  「どれでも好きなモノ、頼んで。」
少女  「で、でも、ここの少し高いけど…。」
困ったように小声で答える少女。

少年  「お礼に利子がついたとでも思って下さい。」
少女  「はあ…」
何か気障な奴って感じで少年を見ている少女。

お茶を飲み終わって、店の前の二人。
少年  「今日は楽しかった、大事な時間を使わせてくれて、ありがとう。」
少女  「いえいえ、こっちこそ、面白い話を聞かせてくれてありがとう。」
少年  「もし、よかったら、また会ってもらえますか?」
少女  「私でよかったら。」
少し照れくさそうに言った。

家に帰って来た少女。
少女  「この電話番号にかけて、メッセージ通りの場所に行ったのに、この人、結局現れなかったなぁ、役に立たないのぉ。」
詰まらなそうな少女。
少女  「ま、そこそこの男コと知り合いになれたからいいか。」
軽く微笑んで電話番号のメモをポーチにしまう少女。

数日後少年と待ち合わせをしている少女。
町の中を歩いている二人。

少年  「てっきり彼氏いるかと思ってたのになぁ。」
少女  「え〜っ、あたしこそあなたがフリーなんて信じられないわよ。」
少年  「そんな事ないよ、いつも固いとか気障とかで振られてばかしなんだよ。」
苦笑いする少年。
少女  「う〜ん、なんとなくわかったりして。」
少年  「え〜、そうかな、これが地なんだけどなぁ。 …嫌いですか、僕?」
少女  「う〜ん、私基本的には好き嫌いは無い方だけど、強いて言うならトマトが苦手な方かな。」
少年  「そっか〜、よかった、僕はピーマンだから安心だ!」
二人  「ハハハ…。」

楽しい日々が続いている。……*注1
そして初めてのキス。

数カ月後の二人。

「   」の前に立ってる二人。
少女  「ここなの、おいしいブレンドを出してくれる店は。」
不思議そうな顔をしている少年。
少女  「どうしたの?」
少年  「いや、実は家の近くにも外観は違うけど、同じ店でおいしい店があるんだ…。」
少女  「へぇ〜、チェーン店かしら、とにかく入って見ましょうよ。」
少年の手を引いて中に入る二人。
ところが中の内装は少女が訪ねたときとまったく変わっており、マスターも見知らぬ人間になっていた。
少女  「あ、あれ、違う店なのかな。」
表の看板を見る少女、しかし間違いはない。
取り合えず座る二人。
少年  「どうしたんだい?」
少女  「前に来たときは、こういう内装じゃなかったし、マスターも違っていたんだけど…。」
店員  「いらっしゃいませ、お決まりでしょうか?」
少女  「あ、あの、前ここにあったお店はどこに行ったんですか?」
店員  「はあ? この店は開店してから、もう何年もここで営業しておりますが…?」
少女  「ええ、そんな?」

少年  「僕の時と同じだ…。」
少女  「えっ?」
少年  「僕の家の近くの同じ名前の店も僕にメッセージをくれた後に中だけが消えてしまって…。」
少女  「メッセージ…?」
少年  「うん、学校とかで嫌なことがあって自暴自棄って言うのも大袈裟だけど、そんな時に偶然その店に行ったら、マスターから気分転換に電話してごらんって、     カードをもらって…。」
少女  「あ、私と同じだ。」
少年  「なんだって? それで僕は電話をしてみたら、すごく優しい声で君と最初にあった場所に来るように言われて、怪しいと思ってたけど足が向かって…。」
少女  「うんうん。」
少年  「まさか、でも…。」
少女  「…全部、その不思議なマスターが仕組んだ事なのかしら?」
少年  「…いや、だって僕は不思議な事にあの場所で急に買い物がしたくなって財布を開けた…、そして突風が吹いた…、それで君と出会った…、こんな事って計算     して出来るとは思えないよ。」
少女  「じゃあ、あのメッセージは…。」
少年  「僕、まだそのメッセージ・カード持ってるよ!」
少女  「あ、私も持ってる。」
二人してメッセージ・カードを出そうとする。
少年少女「ほら!」
カードを出した瞬間、彼らの回りに突風が吹き、カードが吹き飛ぶ。
少女  「あ!」
喫茶店の窓のわずかな隙間からカードが表に飛んで行ってしまう。
少年  「ああ…。」
突然起きた事なので回りの人達は誰も気づいていない。

店の中の電話が鳴る。
店員  「お客様の中で…」
少女が呼ばれる。

少女  「はい、もしもし…。」
電話  「…もう君達にはカードはいらないはずだよ、幸せにね…。」
その声は紛れもなく、あのマスターの声であった。
少女  「あ、マスター! いったい…。」
いろいろと話そうとする少女、しかし既に電話は切れていた。
少女  「マスター…。」

店の外を風に乗ってメッセージ・カードが上空に舞い上がっていく。

                             END

注1……波風を立たせる場合のストーリー

ある日、少年は少女を連れてツーリングに出た。
近郊の海の浜辺に座っている二人。
少女  「うわー、気持ちいい!!」
少年  「バイクは初めてかい?」
少女  「うん、家の両親が厳しくて、バイクでどっかに行くなんて行ったら、そりゃあもう…、だから今日は映画を見に行くって言ってきちゃった。」
少年  「あ〜、悪いんだ〜!」
少女  「バイク乗り回している人の方が悪いですよ〜!」
明るく言い返す少女。
少年  「言ったなぁ〜。」
笑いながら追いかけっこをする二人。

少年  「あ、イタ!」
少女  「どうしたの?」
少年尾の左足の裏に割れた貝が突き刺さっている。
少女  「だ、大丈夫!?」
少年  「う、うん、大丈夫だよ…。」
かなり無理して言っている少年。
応急処置をする少女。

帰路を走っている二人。
少女  「今日は本当にありがとう、楽しかったわ!」
少年  「よし、今度の夏休みには北海道をバイクで回ろうか!?」
少女  「うん!」
満面の笑みで答える少女。

コーナーにさしかかり、シフトダウンをしようとする少年、だが急に先程の痛みが左足を襲いシフトミスを起こしてしまう。
後輪が踊り流れ出してしまう。
少女  「きゃあああ!!」
少年  「しまった!!」
ガードレールからはみ出して海の方に落ちる二人。
二人  「うわわわわ!」

落ちる寸前に海風が強く吹き、砂を巻き上げ二人を受け止める。

気が付く二人。
少年  「アイタタ…、どうやら助かったみたいだね。」
少女  「うん…、何か誰かが支えてくれたみたいだったけど…。」
少年  「えっ?」

以下、前記のストーリーに戻って下さい。

基本設定としてこのパターンもいいなと思うことは…。

最終的に「あくせす」の店長の正体は巨大コンピューターの自己意識と言うことはどうでしょうか? コンピューターの意思をプログラミング中に電話回線を通じて人間の意思と通じる事が出来るようになり、仮想現実にて店を作り、エアコンや車などを計算して操作して、若者の夢や悩みを解決している。 最後にはそのコンピューターの意思を守ろうとする教育係的プログラマーと意思を消そうとする国家的組織との戦いに持っていくのも面白いと思います。 以上のような理由があるためにマスターの正体は知られないようなシチュエーションで最終回近くまで持っていきたいと思います。 その「あくせす」プログラムを組んだプログラマーも人間的にすばらしい人を表現したいと思っております。

世間ではバーチャルアイドルとかが、まだまだない時代にこういう原作を作ったのがミスだったかも(泣)
当時の出版社も流行にないものや、理解しづらいモノは敬遠されたみたいでした(; ;)

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