あんみつ・ぷりんせす(仮題)1994年

東京の下町に老舗の甘味処の店があった。

 そしてそこの主人(江戸川さかえ 72歳)は亡くなる前に一通の遺書を残していた。 その遺書には、「店の権利一切を昔、家出した息子に、ただ息子が不幸にも生存していない場合には、その家族、血縁関係を結んだ者に譲るものとする。」

 残念な事に息子は亡くなっていた、そして店の権利は「息子の嫁」に譲られる事になった。

 嫁の名前は「江戸川 エリザベス(旧姓 ベレス)」、シカゴ生まれのチャキチャキの19歳のアメリカ人であった。

 店の前に立つエリザベス。

エリ  「これが愛するあなたのお母様が残してくれたお店ね。」(カナ書き)

    「あなたのためにも、私…、がんばってみるわ。」

 ここに日本で初めての青い目の甘味処が誕生した。

 着物を着て店に立つ、エリザベス。

老夫婦 「あら、ここのお店は外人さんがやっているみたいだよ、あなた入ってみましょうよ。」

    「おい、よせよ、俺は英語なんか話せないぞ!」

エリ  「イラッシャイマセ!」

 かわいい笑顔で挨拶するエリ。

老夫婦 「ほら、あなた、日本語で大丈夫よ!」

    「そ、そうみたいだな…、入ろうか…。」

 喜ぶエリ、うっかり英語で応対する。

エリ  「ペラペラ…。」

老夫婦 「ほら〜〜! いらっしゃいませだけだよ〜〜、日本語駄目なんだよ〜!!」

 あわてて帰る老夫婦。

 残念がる、エリ。

 店の奥から声が響く。

熊   「なんでぇ、この団子は、ドーナツみたいな甘ったるい味がしやがる、食えたモンじゃねぇ!!」

エリ  「ス、スイマセン、スグツクリナオシマス…!」

熊   「いいよいいよ、それよりこの「特製アンミツ」をくれ!」

エリ  「ア、アンミツデスカ!?」

 実はエリザベスは、まだアンミツの開発まで勉強していなかったのだ。

 厨房に入って、甘味の本を前に悩んでいるエリザベス。

エリ  「ウウ、シラナイザイリョウバカリダワ…。」

 汗だくになるエリザベス。

 似ている材料で作り始めるエリザベス。

エリ  「エ〜ト、コノシロイノハ…、ソッカ〜、ナタデココネ! ソレデ…」

 しばらくすると厨房から、生体実験をしてきたみたいな汚れ方をして出てくるエリ。

エリ  「オマチドウサマ〜! 特製アンミツデェス〜!!」

 しかし、さきほどの頑固そうな男は机の上に金を置いて、すでにいなかった。

 落ち込むエリザベス。

 すると店の中にいたもう一人の若い男の子がエリに声をかけた。

助清  「ねえ、もしよかったら、僕がそのアンミツ注文しようか?」

エリ  「イインデスカ?」

 少しエリザベスに気のあるような少年は嬉しそうにアンミツを食べ始めた。

 青ざめた表情になる少年。

エリ  「ドウデスカ?」

助清  「う、うん、とてもおいしいけど、名前を変えた方がいいかも知れないよ…。」

エリ  「?」

 次の日になり、お客も減ってきて残念がっているエリが座っている。

 大工の熊さんだけが毎日のように通っては文句を言って、帰って行く。

 同じく近所のアパートに住む、予備校生の助清もエリの顔を見たさに通い詰めていた。

 そんなある日の事、ヤクザ風の男たちが店にやってきて、エリを呼び出した。

エリ  「ナニカ、ゴチュウモンデスカ?」

ヤクザ 「ご注文だとぅ〜、おぅよ、こんな繁盛してねえ店買ってやるから、さっさと店の権利書を持ってきな、それが注文よ!」

エリ  「ケンリショ…? ソノヨウナメニューハアリマセンガ…。」

ヤクザ 「うっせーな! この店から出ていけっていってんだよ!」

エリ  「デテイケマセン、コノミセハ、ワタシノダイジナヒトノオカアサンノオミセデス、ワタシココヲマモリマス!」

ヤクザ 「なんだと! てめぇ!!」

 たまたま店に来ていた、助清がエリの前に立ちふさがる、が、膝は笑っている。

助清  「や、や、やめてください! お店の中ですよ!!」

ヤクザ 「なんだぁ〜、てめぇ、女の前でかっこつけたいのか〜。」

エリ  「ア、アブナイデス、ヤ、ヤメテクダサイ!」

 喧嘩になり、ボコボコにやられる助清。

熊オフ  「おまわりさーん! こっちこっち〜!!」

ヤクザ 「ち、まずい、引き上げるぞ!」

 店から逃げるヤクザ達。

熊   「おい、若造、大丈夫か?」

助清  「ぼ、ぼくは大丈夫です、それよりエリさんとお店が…。」

エリ  「ワタシハダイジョウブデス、アリガトウゴザイマス、ダ、ダイジョウブデスカ…?」

 泣きべそ状態のエリザベス。

熊   「くそ〜、あいつら、店まで荒らしやがって、まあ、このくらいなら、俺様の腕なら半日もありゃあ直せるな!」

エリ  「デモ、ワタシ、オカネアリマセン。」

熊   「ばか、誰が金を取るって言ったんだよ! これだから外人って…。」

エリ  「…?」

熊   「俺はな、ここのババアに何度も世話になってるんだ…、この店がなくなっちまったら、困るんだよ! 外人さんにはわからないだろうけど、「義理人情」で     店を直すんだよ!」

エリ  「ギリニンジョウ…?」

熊   「だから、お前もさっさとうまいモノ作れるようになれよ!」

 帰ろうとする熊。

熊   「おめえの、店を守るって言った言葉、信じてるぜ!」

 店も元に戻って、数日後。

 店の外を救急車のサイレンが響く。

 近くに止まる救急車。

 店の外に様子を見に出てくるエリと包帯を巻いた助清。

 救急車に運ばれていこうとするのは熊さんであった。

エリ  「クマサン!!」

熊   「おう、姉ちゃん、情けねえがこのザマだ! こないだ姉ちゃんの店にいた奴らにやられちまったぜ、イテテ… 、気をつけな、あいつらはこの辺一帯を買い取っ     て、でかいショッピングセンターを作るつもりらしい…、…姉ちゃん、店を頼むぜ…。」

エリ  「ハ、ハイ!」

熊   「退院するまでに、うめえアンミツを練習しておけよ…。」

 店に戻ったエリ、暗い部屋で考え事をしている。

エリ  「…ギリニンジョウ…。」

 電話をかけるエリ。

エリ  「モシモシ…、パパ…、ドウシテモ…、ウン…、ワカッテル…。」

 小声で話してるエリ。

 ヤクザの事務所では最終攻撃の相談をしていた。

ヤクザ1「じゃあ、そろそろ一気にカタをつけますか、親分!」

親分  「よし、今日で全員、立ち退きさせろ!」

 窓の外を見ていたヤクザが真っ青になる。

ヤクザ2「あ、あ、あ…。」

親分  「何、震えていやがんだ…。」

 窓の方を見る、親分・ヤクザ1。

 窓の外には戦闘ヘリがサイレント・モードで待機していた。

親分  「な、なんだ〜!?」

 しかも事務所全体が黒服の戦闘員で囲まれている。

ヤクザ1「い、いったい何なんだ!!」

 一人の大柄の男が事務所のドアをマシンガンで突き破って、入ってくる。

ヤクザ一同「ひ〜!!」

 不敵に微笑む大柄の男。

 店の中では、助清よエリが話してる。

助清  「へぇ、お父さんに頼んだんだ?」

エリ  「ウン、ホントウハケッコンスルトキニ、ゼッタイニセワニナラナイッテ、キメテイタンダケド…。 ジョウケンツキデ、オトウサンノシゴトナカマニキテモ     ラッタノ…。」

助清  「お父さんって、社長さんか何かなの…?」

エリ  「ウ〜ン、ヨクシラナインダケド、インタイスルマエハ、ミンナカラ「ドン」トヨバレテマシタ…。」

助清  「ドンって…、え〜!!!」

 真っ青になる助清。

 数日後、熊さんの見舞いに行くエリたち。

熊   「そうか、あいつら諦めたのか…、よかった…、そうだ、ところで、どうだアンミツの腕は上がったか!?」

エリ  「エエ、ソリャア、モウマカシテオイテクダサイヨ!!」

 笑顔で答えるエリザベス。

エリ  「タダ…。」

熊   「?」

 後ろで苦笑いしている助清。

エリ父 「ヘイ!! イラッシャイ!! ナンニシマショウ!?」

 店の中ではエリザベスの一家が仕切ってトンチンカンな営業している。

 店の前には退院してきた熊さんと助清よエリが立っている。

助清  「ねえ、ま、まさか、君が言ってた条件って…。」

エリ  「パパ…、ムカシカラニホンデワタシトクラシタカッタカラ…。」

熊   「あ、わ、わ…。」

エリ  「ア、ダイジョウブデス、パパハスゴイシンニチカデ、アンミツヲ”ニギル”ノヲタノシミニシテイマシタカラ…。」

 笑顔で答えるエリザベス。

 倒れる熊さん。

 慌てる一同。

                               END

基本設定は当初下記の4コマ〜ショートで考えられたモノでした。

「二階のエリちゃん」(仮題)基本設定  4コマ〜4ページ(ショート)1994年

 斉藤さん家に来るはずのホームスティは、日本語がわかり、日本文化に精通した若い男の子であった…。

 ところが、やってきたのは、日本語・日本文化がまるっきり駄目な女の子であった。英語がまるっきり駄目な斉藤さん一家にパニックがやってきた!

 文化・趣味・嗜好・体型、全てが違う相手に翻弄されるコテコテの日本人一家。

 主人公/エリザベス・スミス 16歳

 学校の手配のミスで斉藤さん家にやってきた日本語日本文化がからっきし駄目な女の子。唯一の長所は美貌と長身とナイスバディ〜であった。餃子が好物。通称「エリ」。

 斉藤圭子 17歳

 学校でのあだ名は「どどちゃん」。斉藤家唯一の現役学生の為にエリザベスの世話役を任せられる…が、英語はからっきしの鈍感少女。エリザベスと違って、体は未発達である。

 斉藤一徹 42歳

 圭子の父。家庭では弱気な父。ついついエリの体に目がいってしまい、夫婦喧嘩が絶えない。

 斉藤律子 40歳

 圭子の母。いつも明るい。英語が通じなくとも根性で話すような人。

 斉藤雁鉄 71歳

 圭子の祖父。英語・外人、どちらとも駄目なコテコテの日本人。しかしいつもエリに振り回される役である。いつしかエリといい漫才コンビとなってしまう。

 その他近所の人達

 いまだ外人が珍しいのか、エリを見るたび「外人だ!」「外人さんだわ!」と騒ぐ、典型的な?日本人たち。