青年誌プロット1994年

とある繁華街の裏にあるボロい小さなビルの前に一人の青年が立っている。

青年  「ここでいいのかな〜?」

青年が手に持ったメモを見ると”高級優遇、完全フレックス制、交通支給”と書いてある求人広告である。

青年  「すいませ〜ん、広告見て来たんですが、すいませ〜ん。」

青年がノックをしようとすると音もなくドアが開く。

ゆっくりと中に入る青年。

部屋の中は明かりはあるものの少々薄暗い感がある。

青年  「あ、あの〜、ここは神代現代科学研究所なんですか?」

青年が奥の方に目を凝らして質問をすると、小さな台所が有るのが見え、セーラー服を着ている少女が料理をしている。

少女、軽く振り返り。

少女  「あ、はい、そうですが、何か御用でしょうか?」

青年  「あ、いえ、求人広告を見て来たんですが…。」

少女  「まあ、それはそれは失礼しました。 いますぐお茶を入れますので、どぞどぞ奥へいらしてください。」

不思議そうな顔をして奥へ行く青年。

小さな応接間に通され座らせられる青年。

青年  「あの会社の方はいらっしゃらないのですか?」

お茶を届けにきた少女にさりげなく質問をする青年。

少女  「はい。」

微笑んで青年の対面に座る少女。

不思議がる青年。

青年  「あ、あの…?」

少女  「神代現代科学研究所第157代所長の神代雪女(カミシロユキメ)と申します。」

青年  「…はぁ?」

しばらく開いた口が塞がらない青年。

雪女  「そして、あなたの隣に座っているのが私の弟で仕事を手伝ってくれている雪男(ユキオ )…。」

恐る恐る隣を見る青年。

いつのまにか静かに隣に座っている弟。

青年  「ギャア〜!!」

雪女  「すいません、弟は存在感がないのが取り柄でして、ハハ…。」

青年  「あ、いえ、あの、光ってる、弟さんが光っているんですけど!?」

雪女  「ああ、弟はいろいろと背負っているから。」

青年、深刻そうな顔をして雪女を見る。

青年  「え、家族の血の掟とか原罪とかを、この歳で…?」

雪女  「ううん…。」

青年  「…じゃ、何?」

雪女  「霊なの。」

言葉を失う青年の後ろに巨大な霊団を背負った弟が立っている。

青年  「うわっうわっうわっ。」

腰を抜かしながら部屋の隅に逃げる青年。

青年  「こ、こ、こ、ここはいったい何なんですか?」

雪女  「現代科学研究所ですけど?」

青年  「そんなのはわかってますよ、何をするところなんです?」

雪女  「そうね、漫画のアシスタントや子守もするけど、メインは霊障や妖怪の処理か な。」

微笑んで雪女が答えた。

青年  「で、でも、君はまだ学生じゃないか?」

雪女  「ええ、でも先代のである母が妖怪退治に失敗しまして、母の魂が私に移った時から、この仕事を継がないといけない規則だから…。」

青年  「…いったい君達は何者なんだ?」

雪女  「…私たちは古代大和倭国の卑弥呼様にお仕えしていた巫女の子孫なんです。」

青年  「…はあ…。」

雪女  「生まれながらに霊や妖怪と戦う事を義務付けられているんです。」

青年  「そんな…、無理にしなくてもいいなじゃないの?」

雪女  「でも…、駄目なんです。」

青年  「じゃあ、やっぱり血の掟とかあるのかい?」

雪女  「…ううん。」

青年  「?」

雪女  「勝手に霊が寄ってくるんです。」

応接間に低級霊が充満している。

青年  「グワギャア〜!!」

青年  「た、たすけて〜!!」

雪女  「大丈夫、大して害は及ぼさないから。」

笑顔で話す雪女。

青年  「そ、そ、そんな問題じゃなくて、ぼ、ぼくには何か向いてないような気がしますんで、こ、こ、この辺で帰らせていただきたいとぉ〜思うんですけどぉ〜!!」

雪女  「あら、残念ね、あなた、いろんな霊に好かれているわよ。」

青年  「えっ?」

青年の肩にてんこ盛りに低級霊が乗っている。

青年  「ひぃ〜、どうしたらいいのよ〜!!」

雪女  「う〜ん、ここで働くなら、結界の働きでそれ以上、悪い事にはならないと思うけど…、残念だけど、あなたがここをやめちゃうと、私もどうなるかは…。」

青年に背を向けて、ほくそえむ雪女。

青年  「わ、わかったよう…!」

応接間に神妙に座ってる青年。 対面には雪女が座ってる。

部屋の中には雪男が網を持って、低級霊を捕まえて背中のランドセルの中にしまってる。

雪女  「え〜と、名前は日野 連者(ヒノ レンジャ)、変わった名前ね。」

日野  「父がみんなを引っ張って行けるような力強い男に成れって、付けてくれたんです。」

誇らしげに答える日野。

雪女  「あなたにやってもらう事は、仕事の整理と自動車の運転と…、霊媒になってもらう事よ。」

日野  「霊媒?」

雪女  「ま、おいおいわかるわ。 ところであなた車の運転はうまい?」

日野  「そりゃあまあ、昔は友人と馴らしたものですから…、それなりに…。」

雪女  「…それと、あなた猫は好き?」

日野  「ええ、実家では飼っていました。」

雪女  「それはよかったわ、ついてきて。」

裏の駐車場に連れていかれる日野。

駐車場には一世代前のコンパクト・カーが置かれている。

屋根のスキーキャリアには独枯舒が積んである。

雪女  「この車なんですけど、大丈夫かしら?」

日野  「ええ、別に大丈夫ですけど、まわしてみましょうか?」

そそくさと車に乗り込む日野。

ドアを思いっきり閉めてしまう。

雪女  「あ、そんなことしたら!」

猫の鳴き声と共に車の中で引っかかれている日野、しかし猫の姿はない。

ボロボロになって車の外に出てくる日野。

日野  「引っかかれるわ、車のキーはないわ、なんすか、この車?」

雪女  「この車はね、その昔持ち主がひどい人で猫を何回もはねたの、お蔭で猫の怨念がこの車にとりついちゃって…、はは…。」

日野  「そんな恐ろしい車、運転出来ますか!!」

雪女  「あら、大丈夫よ、私が怨念だけは取り除いたから、やさしく猫の気持ちで乗ってあげれば、とってもいい走りするのよ。」

日野  「…んな…。」

雪女  「ねえ、ミーちゃん。」

フロントバンパーの下を指でくすぐる雪女。

ゴロゴロ言いながら、引っ繰り返る車。

納得行かない顔の日野。

事務所に戻ってる一同。

雪女  「次は、御札の書き方教えるね。」

日野  「え、御札って、神社とかで売ってる?」

雪女  「そうそう、あれの強力な物を作ってもらうの。」

日野に紙と筆を渡す雪女。

日野  「いや、でも、僕にはそんな神通力なんかはありませんから、御札を作るって言っても…。」

それでも一応、筆を持つ日野。

雪女  「大丈夫よ、力は筆にあるから。」

微笑む雪女。

日野  「えっ?」

筆がぐにゃぐにゃ曲がり日野の腕に絡み付いてくる。

日野  「うぎゃ〜!!」

雪女  「400年も生きた蛇さんが乗り移って、書く文字に力を与えてくれるのよ。」

日野  「あ、は、そ、そうですか…。」

雪女  「まだまだこの事務所には私たちを手伝ってくれる方達がいますから、順に紹介1 を…。」

日野  「いや、追々で結構ですので…。」

焦ってる日野。

外から消防車の音が聞こえてくる。

雪女  「あら、傍かしら?」

窓を開ける雪女、ビルの隙間から遠くで煙が上がっているのが見える。

雪女  「あら、あの煙は…。」

日野  「…!」

驚く日野。

雪女  「どうしたの?」

日野  「あ、あれは俺のアパートだ!!」

慌てて飛びだそうとする日野。

雪女  「あ、待って、私たちも行くわ! 車出していいわよ!」

日野  「え、どうして? 僕だけでだ、大丈夫ですよ。」

雪女  「あれは妖怪が燃やしている火よ…。」

日野  「えっ!」

雪女  「さ、早く、時間がないわよ。」

ネコ・カー?で飛び出す三人。

火事現場に到着する。

日野  「あ〜、俺のアパート〜!」

消防隊が懸命に消火活動をしているが、なかなか火は収まらない。

雪女  「さ、あの火に私の気を当てるわよ!」

雪女が火に向かって構えると、光が集まり始め、巨大な光球になる。

回りの人達は火事に気を取られ、雪女の行動には気がついていない。

雪女  「アノクタラ・サンミャク・サンボダイ…、ハッ!!」

掛け声と共に光球がアパートに飛んでいく。

光球がアパートに当たるとアパートが吹っ飛ぶ。

日野  「あ〜!!!」

雪女  「黙って! 来るよ!」

アパートは壊れたのに炎だけが宙で燃えている。

その炎が集まり始め、人型を形成し始める。

回りの人間は驚き、その場を逃げ去る。

雪女  「姿を現したわね! ヒツケー・トーゾ・クアラッタメ!!」

日野  「火付盗賊改め?」

雪女  「本来、日本にいないはずの西洋妖怪なのに、なんで日本なんか!?」

日野  「西洋の火付盗賊改めぇ〜!?」

雪女  「うるさいわね、少しは黙ってみてらっしゃい。」

ヒツケー「なんじゃ〜、お前は!?」

雪女  「私は日本の巫女よ! お前を退治に来たわ!」

ヒツケー「なにっ!? お前があの有名な日ペンの美子ちゃんだったのか!!」

雪女  「美子ちゃんよりは数千年歴史は古いけどね!」

神秘的な術を使い戦う雪女。

どういたらいいのか、わからずにオタオタしている日野。

雪女  「くそ〜、手強いわね!!」

雪男  「お姉ちゃん、がんばれ!」

雪女  「雪男のためにも今日こそあの技を完成させてやる!」

日野  「?」

呪文を唱え始める雪女。

ヒツケー「や、やめろ〜!!」

雪女  「本来、お前が住むべき場所に戻るのだ!」

ヒツケー「ふ、甘いな。 もうすぐあのお方が目覚める…、我々はそのために世界中から集まって来たのだ。」

雪女  「何!?」

ヒツケー「は、は、そんな術では、お、俺すら、満足には、倒せんぞ!」

雪女  「なんだと!!」

断末魔と共に消え去るヒツケー。

雪男がビクッとなる。

雪女  「あ、ま、また、やっちゃったかな?」

日野  「どうしたの?」

雪男  「お、お姉ちゃん、また、入っちゃったよぉ〜!!」

泣きそうな声で答える雪男。

日野  「いったい何が起きたんだい?」

雪女  「私がまだ未熟なんで、完全に物の化を消すことが出来ないのよ。 すると物の化は力を失うけど、どっかに居場所を求めようとするの。」

日野  「ま、まさか…。」

雪女  「雪男は超吸収霊媒体質なの…。」

日野  「まさか、いままで退治してきた奴も…?」

雪女  「うん…。」

申し訳無さそうに頷く雪女。

日野  「それで…、彼は暗いのか…。」

雪男  「何言ってんだい、あっかるいよ!」

一生懸命、明るい金子吉延風のポーズを取る雪男。

だが…、やっぱり暗い。

雪女  「でも、雪男、よかったわね、同じ様な体質の人が入社してくれて。」

日野  「え、お、俺?」

雪女  「そう、これからもよろしくね!」

微笑み返す雪女。

日野  「ちょ、ちょっと待って、やっぱり俺には向いてないかも…。」

雪男  「大丈夫、事務所にいた妖怪ヒトたちは、みんなお兄さんに入ったから、才能はバッチリだよ!」

日野  「ゲーッ!!」

雪女  「それにしても何が目覚めるのかしら…?」

上空に暗雲が立ちこもる。

                     TO BE CONTINUED

プロット(修正部分)5ページ目

女  「うん…。」

申し訳無さそうに頷く雪女。

日野  「それで…、彼は暗いのか…。」

雪男  「何言ってんだい、あっかるいよ!」

一生懸命、明るい金子吉延風のポーズを取る雪男。

だが…、やっぱり暗い。

雪女  「でも、雪男、よかったわね、同じ様な体質の人が入社してくれて。」

日野  「え、お、俺?」

雪女  「そう、これからもよろしくね!」

微笑み返す雪女。

日野  「ちょ、ちょっと待って、やっぱり俺には向いてないかも…。」

雪男  「大丈夫、事務所にいた妖怪ヒトたちは、みんなお兄さんに入ったから、才能はバッチリだよ!」

日野  「ゲーッ!!」

雪女  「それに…、日野さん帰るところないんでしょ!?」

日野  「…あ!!」

日野の目の前で燃え落ちている日野のアパート。

雪男  「よかったね、お兄ちゃん。」

不気味に微笑む雪男。

雪女  「さ、事務所に戻りましょう。」

日野  「やだ〜!!(OFF 幽霊屋敷なんて〜!!)」

車の後ろに無理やり乗せられている涙顔の日野、そのまま去って行く一同。

上空に暗雲が立ちこもる。

                     TO BE CONTINUED