青年誌用プロット1994

天界の公園では一人の少女が物思いにふけっていた。

少女「あ〜明日はやっと生まれ変わる事が出来るのね!」

神様「お前も長く待ったかいがあったな。」

後ろに神様が現れる。

少女「はい!いったい、どんな女の子に生まれ変わるのかしら!?」

神様「それこそ、神のみぞ知るじゃな。」

少女「…?」

次の日、少女は数人の神様が待つ部屋に立っていた。

神様「さあいよいよ、お前が生まれ変わるときが来たようじゃ覚悟はいいかな?」

少女「はい!よろしくお願いします!」

神様「では行くぞ!」

少女「…はい!」

少女の足元が丸く光り、少女を光の柱が包み始める。

下界では一人の青年が車(パオ)を買おうとしていた。

店員「では、これがお車のキーになっております。それと車検証と…」

青年「ありがとう、じゃあ早速エンジンをかけてみるよ。」

少女「……!」

少女が気がつくと、真っ暗な世界であった。

少女「あ、私、生まれ変わったのね。ここはどこかしら?」

少女「あ、いてて。なによ〜!?」

少女のお尻に車のキーが刺さってる。

少女「な、なに?」

青年「あれ〜おかしいな、なかなかエンジンがかからないなぁ?」

一生懸命キーをひねっている青年。

店員「そんなことはないんですがね〜?」

エンジンがかかり始める車(パオ)

少女「え、え、なになに!!??」

真っ暗な世界で少女の体が振動を始める。

青年「それじゃ、失礼します。」

走り出す車。

少女「え、あの、まさか、神様〜!!」

少女は自分が”車”に生まれ変わった事に気づき、神様に助けを求めるのであった。

神様「…ごめん!!…」

神様の思い切ったセリフが少女の頭に響いた。

少女「神様!どう言う事よ!!」

神様「こっちの世界もオートメーション化されてのぉ、まだみんなパソコンとかは使い慣れてないのじゃよ…、で、うっかり、お前さんの魂が車に入ってしまったんじゃ。」

少女「いやよ!早く何とかしてよ!!」

神様「わかっちょる!早急に手続きをし直すでなちょっとの間だけ我慢してくれ。」

少女「ひ〜ん、うるさいよぉ!神様早くしてよ〜!!」

エンジン音で少女の台詞が書き消されそうである。

青年「ん?何か声が聞こえたような…?」

神様「そうそう、出来るかぎり魂を傷付けない方がいいでの、交通事故には十分気をつけるんじゃぞ!」

少女「え〜、そ、そんなこと言ったって!?」

車が急ブレーキをかける。

少女「あ〜ん、ちょっとぉ、私の命がかかってるんだから、気をつけて運転してよ〜!」

神様「まあがんばれば多少の機械は動かせるようになるでの、がんばりや〜!」

少女「そんな無責任なぁ〜!!」

青年のアパートの駐車場に着き、ホッと一息の車カノジョ。

少女「ふ〜、なんとか無事に着いたけど、この調子じゃいつ事故を起こすか心配だわ。」

安心したのも束の間、青年が部屋から下りてきて車に乗り始める。

少女「あれ、どこにいくんだろう?」

非常にウキウキしている青年、鼻唄まじりで運転をしている。

着いた先は公園の駐車場であった。

鼻唄まじりで車を下りる青年。

少女「そっか〜、デートか、ウフフ…。」

向こうから青年の彼女がやってくる。

彼女「へぇ〜これがあなたの買った車?」

少女「まあ、なかなかの女ヒトじゃない、でも私が生まれ変わっていたら勝ってたわね。」

勝ち誇ったような少女。

彼女「とってもかわいい車ね。」

少女「あら、なかなか見る目があるじゃない。 なかなかいい人ね。」

機嫌が良くなる少女。

彼女を誘いドライブに出発する青年。

ところが少女の方は不機嫌な顔になっている。

なぜなら彼女の方は青年と違って煙草をプカプカふかしているのであった。

咳き込む少女。

彼女は吸殻を灰皿になすりつけると少女が思いっきり熱がった。

少女「あちちちちち〜! ちょっといいかげんにしてよ!!」

青年「ん、何か言った?」

彼女「え、ううん、何も言ってないわよ。」

青年「おかしいなぁ、さっきから誰かの声が聞こえるような気がするんだ。」

彼女「きっと疲れているんだよ、おいしい物をいっぱい食べればきっと直るよ。」

笑顔で答える彼女。

急に少女の顔が歪む。

少女「彼女コイツ…すかしっ屁をしたな〜。」

車がふらふらし始める。

青年「ありゃりゃりゃ、ど、どうしたんだ?」

彼女「ちょ、ちょっとぉ、しっかり運転してよね!!」

車の床を踏み叩く彼女。

少女「いたい!いたい! も〜どうするか見てらっしゃい!」

彼女「ねえ、ちょっと暑くない? エアコン入れていい?」

青年「あ、いいよ、スイッチわかる?」

彼女「うん。」

スイッチを入れる彼女。

少女「よーし! いまだ! 失礼して…。」

顔を赤らめ始める少女。

エアコンの吹き出し口から思いっきりオナラの匂いが流れ出てくる。

彼女「うっ!」

青年「う、な、なんだ、そうならそうと言ってくれれば。」

ちょっと困った顔の青年である。

彼女「な、なによ、私がやったって言うの? あなたの車から匂ってきたのよ!!」

青年「なんだよ! 俺の愛車にケチをつけるつもりかよ! ガスや排気の匂いはしても屁の匂いが出てくる訳ないだろ!!」

彼女「もういいわ!」

怒って煙草に火をつけようとする彼女。

ところが火をつけようとすると必ずエアコンから強い風が出て、ライターの火を消してしまう。

ますます怒り心頭になる彼女。 思いっきり背もたれに寄り掛かろうとするが、少女が背もたれのロックを外しておいたので彼女はそのまま後部座席に転げ落ちる。

青年「お、おい、大丈夫か?」

運転しながらも後部座席の彼女を心配する青年。

彼女「も〜いいっ!!」

青年の顔に彼女の紅葉ビンタを残し、車を降り去っていく彼女。

青年「ちょ、ちょっと、待ってよ。」

必死に彼女を追いかけるが途中でしょげて車に戻ってくる青年。

青年「あ〜あ、ミスっちったなぁ〜。かわいい女コだったのになぁ〜。」

少女「アララ、かなり落ち込んでいるみたい、ちょっとやり過ぎちゃったかなぁ。」

青年「いっその事、車オマエが彼女だったらなぁ、どんなに気が楽か…。」

自分の車に話しかける青年。

少女「…なってあげましょうか?…」

青年「ん、また何か聞こえたぞ、…まさか車がな…、ハハハ…。」

少女「だぁかぁら、車ワタシがなってあげようか、彼女に?」

青年「…おい、さっきから、誰だよ! どこにいるんだよ!」

少女「…ったく、鈍い人ねぇ、車ワタシよ、車ワタシ。」

青年「…。」

少女「ねぇねぇ、気分転換にどっか行こうか?」

青年「どうも、振られたショックでおかしくなったみたいだ。」

少女「いいかげんにわかんなさいよ!!」

クラクションを鳴らす車少女。

青年、目を丸くして驚いている。

青年「…マジ?」

少女「マジ、マジ、大マジ、檄マジ。」

青年「…おまえ、なんで、え〜っ?」

青年はまだ半信半疑である。

少女「まあ話せば長くなるんだけど、とにかく私は生きているんだからね。」

青年「でも、これ、車だよな?」

車に車かどうかを聞いている青年。

少女「車だけど、生きてるの!」

青年「…こりゃ、すごいや、下手な特撮SFが腰抜かすぞ。」

少女「私と比べないでちょうだい!」

青年「ゴメン、ゴメン、じゃあ友達に自慢しにいっていいかな?」

少女「う〜ん、どうも私の声はあなたしか聞こえないみたいよ。」

青年「そういえば彼女には聞こえなかったみたいだな。」

少女「下手に私のことを言うと、あなたが病院送りになっちゃうかもよ。」

青年「う〜ん、こんな凄い事、俺一人の胸にしまって置かないといけないのか。」

誰かにいいたそうな青年。

町の中を帰宅途中の車カノジョ

青年「…そうすっと、おれが下手に事故起こすと、お前が生まれ変われなくなっちゃうかも知れないんだ?」

少女「そうよ! だから気をつけて運転してね!」

青年「…やっかいな車モノ買っちゃったなぁ。」

小声で愚痴を言う青年。 少々困り果てている。

少女「何か言った?」

青年「俺は本当にウルトラスーパーデリシャス・ラッキーな男だと言ったの。」

少女「本当ぅ〜?」

夜遅くアパートに着く青年と車カノジョ。

青年「じゃあな、また明日。」

少女「ちょっと、ちょっと、車のカバーとかないの?」

青年「そんな金まで回らなかったよ。」

少女「こんな冷え込む夜に女の子を裸で置いておく気!?」

青年「うっさいなぁ、車なんだから我慢しろよ!」

少女「ひどい!ひどい!」

車のクラクションをブカブカ鳴らす車カノジョ

住人「うっさいぞ!! 誰だ!?」

青年「わかった、わかった、ちょっと待っててくれ。」

自分の部屋から毛布とか持ってくる青年、それをガム・テープ等で繋いで車にかける。

少女「うん、ちょっと見た目は悪いけど、なかなか温かくてよろしい。」

青年「はいはい、それはよござんしたね。 そんじゃおいらは寝かさせて頂きます事よ。」

次の日、アルバイトに向かうために車に乗る青年。

車のフロント・グリルに向かって挨拶をする青年。

青年「おはよう、お姫様、ご機嫌はいかが〜?」

そのとたん、エアコンの通風孔から思いっきり、くしゃみが出る。

埃などが思いっきり青年の顔にかかってしまう。

青年「…なかなか上品な挨拶だね。」

少女「あれ、安物の毛布ね〜。 朝方の冷え込みはきつかったぞ〜!!」

青年「うっせなぁ、お金がないんだから仕方ないだろ。 金がたまったらちゃんとした車カバー買ってやるからさ。」

少女「早くしてよ! ハックション!」

青年「だからバイトにいくんだろ。」

困った表情で車を出す青年。

途中、開店したての銀行で何やら騒ぎが起きている。

青年「なんだろ?」

行員「強盗〜!!」

銀行員の言葉と同時に扉から飛び出してくる仮面をつけた二人組。

銀行の前に止めてあった車に飛び乗って、去って行ってしまう。

青年「うっひゃ〜、すげえな、強盗だってよ。」

少女「なにやってんよ! あの強盗捕まえれば金一封に銀行からのお礼で高級車カバーが買えるでしょうが! 追うのよ!!」

青年「え、そんなこと言ったって、そんな追うほどの技術が…。」

少女「男が何クダクダいってんの! よーし。」

エンジン音が高くなって、ギアがかってに入り始める。

青年「お、おい、待てよ!! あ、相手は強盗…うわっ!!」

タイヤを鳴らしながら急発進をする車カノジョ。

青年「ひぃぃぃぃ〜!!」

少女「待て〜!!」

犯人「兄貴〜、変な車がすげえスピードで追って来ますぜ!」

兄貴「妙なお節介野郎がいるんだろうよ!」

少女「あんたもボーッとしてないで地図とか見て先回りの道とか考えなさいよ!」

青年「あ、はい、はい!!」

いいように車ショウジョに使われている青年。

青年「た、たぶん、あいつらは国道に向かっているんだと思うけど…。」

少女「じゃあ、そこに行く近道は!?」

地図を必死に見る青年。

青年「あ、そこの先を右に曲がれば近いけど…。」

少女「わかった、右ね!」

青年「え、いや、あの!!」

猛スピードで右折する車。

青年「あ〜、いまの時間、通学用道路だって〜!!」

少女「もう遅いわよ〜!!」

パニックになる通勤・通学者。

通学用道路を飛び出る車。

しかし車カノジョの後ろにもパトカーが追って来る。

パト「そこの車、止まりなさい!」

青年「ひぃぃぃぃ〜!!」

目の前の交差点の左の道路から犯人の乗った車が飛び出してくる。

少女「あいや〜!!!」

青年「おかあさぁ〜ん!!!」

犯人の車の側面にぶつかる車カノジョ。

回りを一斉にパトカーに囲まれる。

青年「おい、おい、大丈夫か? 返事してくれよ〜!!」

静まり返っている車カノジョ。

警官「さあ、お前も降りてくるんだ!」

青年「はや〜…。」

数日後、修理した車に乗っている青年。

青年「しかし、車オマエが気絶していたとはね。」

少女「死んだと思って、心配した?」

青年「いっその事、全損してくれれば買い換えようと思ってたけどね、ハハ…。」

少女「ひっど〜い! 私が生まれ変わったら、思いっきりひっぱたいてやるから。」

青年「美人を期待してるぜ!」

少女「ねえ! ところで車ワタシのカバーヨウフクどうなったの? 買ったの?」

青年「…それが…。」

少女「…?」

青年「あの事故についてはな、警察に事情を話したら、わかってもらえてな。」

少女「物分かりよくて、よかったじゃない。」

青年「金一封ももらえてな。」

少女「何も問題ないじゃない。」

青年「事故や通行禁止の道路を抜けた罪は受けなくて済んだけど、罰金だけは取られてね。」

少女「げ…。」

青年「金一封に俺の貯金を足して、ちょうどだったかな。」

少女「じゃ、じゃあ銀行からのお礼は?」

青年「貰えたよ。」

少女「なんだ、よかった、びっくりさせないでよ。」

青年「ほら、そこにあるだろ。」

車の助手席に銀行の名前とマークが入ったティッシュの箱が置いてある。

少女「これだけ…?」

青年「いんや、アパートに貯金箱もあるよ。」

少女「きびしいなぁ〜、トホホ…。」

少女「バイトでがんばるしかないね。」

青年「あの日、事故で休んでクビになった…。」

少女「そんな〜神様〜!!」

天上界では神様がパソコンを前に悩んでいる。

エラー音が鳴るパソコン。

神様「あや〜、またエラーか、さっぱりわからんなぁ!」

                     TO BE CONTINUE